モテない人ほど満たしてくれる
次の指名が入るまでには3日もかかった。
さすがにそこまで間が開くと、自分が大して売れないということを理解する。ショックを通り越して、日常からウリセンという自分がどんどん薄くなっていくほどだった。
今回は18時~19時半の1時間半コースの後で、21時~ロングコース(泊まり)という指名が入った。二本立てというのは、売れっ子みたいでちょっと嬉しい。
前回のように10分前に個室で待機していると、インターホンが鳴る。
お客様は30代後半くらいで、太め体型。声をかけても大人しい。
「どちらから来られたんですか?」
「よく利用されるんですか?」
などという、月並みな質問を続けるが、反応は鈍い。といっても、こういう客は多いとオーナーが言っていた。
『お客さんはモテないとか、コンプレックスを抱えてくる人が多いから。それに気付いてあげて、心遣いをしてあげてね』
正直に告白すると、俺はこういう客が来たことがとても嬉しかった。
タイプでもないオジサンとセックスするのなんて嫌じゃないの? と聞かれたこともあるが、意外にも仕事だと思うと嫌という気持ちはあまりない。あくまでも作業の過程であり、そこに情などはなく、自分の中ではコンビニのバイトと変わらない。
しかし、モテない部分をウリセンで埋めようとしてくれるということは、自分が認められたみたいで嬉しくなる。
相手がオジサンでモテない人ほど、自分の承認欲求が満たされていく。我ながら、最低だとは思う。しかしそれは、金銭が伴うからこそ気付かされた。
(この人は、俺に金を払って俺に価値を与えてくれる。なんていやらしい快楽なんだろう)
短い時間なので、話を早めに切り上げ、ふたりでシャワーを浴びる。やはり脱ぐと体はたるんでいて、ニキビやシミでいっぱいだった。太っていると肉のせいか、勃起しても小さい。しかしその体と自分を対比すると、自分の価値が一気に上がった気になる。やっぱり最低だ。俺はクズだ。
でも、ここまでしないと自分を認められない哀れな人間なのだ。
セックスはバックなしの、手コキであっさりと終わった。
心を込めたつもりだが、喜んでくれたのかは反応が鈍くてわからない。ひょっとしたら、喜んでいるバカな俺とは裏腹に、単なる性欲処理で来たのかもしれない。
再度シャワーを浴びて、服を着て帰っていく。それから掃除をして事務所へ向かう。
結構ルーチンワークでもあるのだなあ、と思った。