ゲイビデオへの出演
ウリセンを続けて二ヶ月。
たまに指名が入って売れていくウリセンボーイということに、俺はそこそこ満足していた。自分には性的な価値があるのか? という疑問に、売られるたびに「ある」と答えてもらっているようで、性的な承認欲求が満たされた。
それでも、いつもあと一歩越えたいと思っていた。
何故か。ちょっとのウリセンや整形では満足できないということだろうか。それとも、性的な承認欲求は常に渇望し続けるものなのだろうか。そもそもあと一歩越えたところって、どこなんだろうか。
そんなある日、ゲイの友達と普通に電話していた時のことだった。
「それじゃあ、来週の日曜日に遊ぼうか」
『いや、その日は撮影があって! ごめん』
電話の相手、リョウは謝ってくる。
「撮影って?」
『ビデオのだよ。またお誘いが来たからさ』
そういえば、リョウはゲイビデオにたまに出演していて、その数はもう10本を超えていた。最初は上京してお金目的だったのだが、撮られることが気持ちよくて続けているのだという。それと、「若い時の体を残しておきたい」と女性芸能人がヌード写真集を出したときの言い訳のようなことも言っていた。
でも、その気持ちはよくわかる。こじつけかもしれないが、リョウにも俺に似た承認欲求があるのかもしれない。
「あのさ、俺もビデオ、出てみたいんだけど」
自分でも思いもしない言葉が出てきた。でもそれは、確かな気持ちだった。
『急にどうしたの? 本当だったら紹介するけど』
以前リョウの話を聞いたときは、俺には彼氏がいたし、蚊帳の外の出来事だと思っていた。しかし今は、自分のことを知りたい好奇心があった。ウリセンとは違う場所で、俺は性的にどう扱われるのか。そして何を感じるのだろうか。
リョウはすぐに話をつけてくれて、その後、俺はメーカーのホームページ経由で、リョウからの紹介でと添えてメールと写真を送った。
すぐに返事は届き、数回のやりとりで撮影日は決まった。リョウと電話をしてから、たった数時間の出来事だった。