誕生日にウリセンへ
年下のお客様、ヒデくん(16.17.21参照)は月1ペースのリピーターになってくれた。
しかも、その日は25歳の誕生日だと言う。
「えっ、本当に? 知らなかったから何も用意できてないよ? これからどこか行ってお祝いしようよ」
俺がそう言っても、特に何もいらないから一緒にいてほしいとのことだった。
正直なところ、来てくれるのは嬉しいけど、誕生日にウリセンを指名するのはどうなんだろう……という思いもあった。
とはいえ、特別な日に来てくれたのだから頑張らなくてはいけない。プレイはケツに慣れてきたのか、アナルが相当感じていた様子で安心した。
あとはいつものように、長い時間話をする。
「今日はね、僕のこと知ってほしくていろいろ写真を持ってきたんだ」
「……え?」
ヒデくんはそう言って鞄から写真を出してくる。100枚以上あって、一番上は赤ちゃんの写真だった。おそらくヒデくんだろう。
一枚ずつ写真をめくって、その度にヒデくんのコメントを聞く。何を言えばいいのかよくわからなくて、とりあえず、かわいいねとか、褒めたりした。
(何だろう、この感じ。思っちゃいけないんだけど、何かヘン……)
距離のとり方への違和感。でも、こんなことを考えている自分のほうがおかしいのかと思い直す。
「ヒデくんの今年の目標は何かある?」
誕生日にちなんで聞いてみる。
「うーん、友達をもっと作ることかなあ」
確かに。もしヒデくんに友達がたくさんいて、恋人もできたらウリセンに来ていただろうか。いま彼にとって、ここに来るのが一番いいことなのだろうか。
本当は、若いうちからウリセンに来ないで、友達に時間やお金を使ったほうがいいよ、と言いたかった。でも、いまそれを言うことが俺の役割ではない。説得力もない。ここでは正論なんて、誰も求めてはいない。
お金でセックスする関係じゃなくて、親身にアドバイスできる友達になりたかった。
恋人っぽくなることはできても、本当に親身になることはできない。仕方ないけど、残酷さもあって、胸が痛んだ。