危険都市

大学のサークルの先輩が、卒業旅行にヨハネスブルグへ行った。
それまで僕はそんな街など聞いたこともなかったのだが、南アフリカ共和国の都市である。
何しろ治安の悪さで有名で、「世界一の危険都市」と言われるほどらしい。
わざわざそんなところを旅行しようと選んだ馬鹿先輩たち。
「他人と違うことをしたい」といった単純な考えだったのだろう。
まだ戦時下の国に行くよりはマシかもしれないが……。
「街中を歩いてはいけない」という常識があるそうだが、先輩たちは肝試しのつもりで街中へ繰り出したそうだ。
朝でも昼でも街を歩けば強盗に遭うというほど危険だそうだが、「お金を持ち歩かなければいい」という馬鹿みたいな発想で先輩たちは街を散策。
さて、明るい大通りを５人で固まって歩いていると、いきなり大勢の黒人たちに囲まれたそうだ。
ホテルを出て、僅か数分ほどのことだったらしい。
黒人たちはナイフや銃を持っていて、先輩たちはその時ようやく後悔したんだと思うが、時すでに遅し。
馬鹿大学の馬鹿学生だから、ろくに英語も話せない。
片言の英語で、ようやく誰かが「俺たちは一文無しだ」といったことを伝えたそうだ。
すると、黒人たちは「嘘をつけ」と言わんばかりに銃をつきつけ、「服を脱げ」と言ったらしく……。
５人の日本人学生は、身ぐるみを剥がされ、危険な街に放置された。
下着まで持って行かれ、素っ裸の状態。
「とにかくホテルに戻ろう」
ホテルを目指した５人は、程なくして２人組のナイフを持った黒人に遭遇。
必死にアピールするまでもなく、全裸の５人は一文無しである。
しかし、黒人たちの目的は強盗ではなかった。
５人の中で最もイケメンである先輩が、黒人たちに腕を掴まれて……。
その先輩は４人が見守る中、２人の黒人に犯されたそうだ。
さすがにその時の詳細は先輩たちも口をつぐんだ。
きっと、目を覆いたくなるような壮絶なレイプだったに違いない。
イケメンだけど彼女一筋の先輩。
男とのセックスも、野外でのセックスも、複数でのセックスも全てが初経験だったそうだ。
そんな経験談を面接で堂々と披露し、先輩は就職活動でいくつもの内定をゲットした。
三流大学としては奇跡的な内定先に先輩は就職していったけれど、僕は彼がＨＩＶ検査を受けたのかどうかが今でも気がかりだ。