ウリセンの面接
その後、何度かメールのやりとりをして、顔写真の写メも送って審査が通ったということで面接をすることになった。
場所は当然というべきか、新宿2丁目付近の雑居ビルの一室だった。
「失礼します」
多少の緊張が織り交ざった声で部屋に入ると、そこは6畳くらいで狭く、机が2つとソファが並んでいた。30代くらいの男性がひとりでいるが、この人が店長なのだろう。ゲイ同士にある「この人はゲイだ」という感覚が反応して、何となく確信した。
「じゃあ座ってください」
俺はソファに腰掛け、男性は椅子に座ったままで面接が始まった。
といっても、週にどれくらい出勤できるのか、とか給料の話など普通のバイトと変わらない話で、面接は10分ほどで終了してしまった。もっと特別な世界だと思っていただけに、拍子抜けだ。
最後の質問だけが、かろうじてウリセンっぽかった。
「最後に……月にいくらくらい稼ぎたいですか?」
「えっ。普通がいくらかわからないので……いくらでもいいです」
お金が目的ではなかったので、これは本音だった。結局、10万円くらいですかねえとバイトっぽい金額を言うと、「大丈夫でしょう」とのことだった。
部屋を出て、どこにも寄らずに家へ戻る途中、
「こりゃ面接、落ちたな」
とがっくりした。あまりにも相手の反応が鈍すぎた。確かにウリセンはイケてなくちゃいけないし、顔もガタイも自信がない俺じゃダメなんだろう。
働けないのでは、という気持ちよりも、見た目で落とされたのでは、というショックな気持ちのほうが大きい。
(まあいいか。話のタネくらいにはなりそうだし)
しかし数日後、
お世話になっております。
先日はお忙しい中、アルバイト面接にお越しいただき誠にありがとうございました。こちらで検討させて頂いた結果、アツヤ様さえ宜しければ、是非ご一緒に働かせて頂きたくご連絡差し上げました。
という採用のメールが届いた。
いま思えば安直な考えだが、自分を認めてもらえたような嬉しさがあった。