舐め続けても反応する気配がない。年齢のせいだろうか。
「ごめん。あの時以来、あまり勃たなくなっちゃって……」
上杉さんが謝る。「あの時」とは3月11日。震災だ。
バック希望ということだったので一応コンドームをかぶせ、ローションを塗って入れてみようとするが、柔らかいので入れられない。どうしよう。悩んでいると、上杉さんが諦めた様子で言う。
「じゃあ……アツヤくんが入れてみてくれるかな」
「わかりました。じゃあまずは指でほぐしますね」
指にローションを塗りたくり、一本ずつ肛門へと挿入していく。ウケだったら問題ないだろう……と、思いきや。
今度は俺のほうが勃起しなくなってしまった。さすがにそれはヤバい。こっちは仕事なのだから。
この時はまだわからなかったが、いろんな人を相手にしていると、やはり体の相性というのが存在する。相性がよければ、シャワーを一緒に浴びるだけで勃起するし、触られるだけで気持ちいい。しかし、そんなことは勃たなければ言い訳にすぎない。
「あの、今度は僕のほうが反応しないみたいで……スミマセン」
タチもウケも満足にできない、ろくでなしなウリセンだと我ながら思う。
「そっか。じゃあどうすればいいですか? お任せします」
上杉さんは急に敬語になり、不穏な空気になりつつも、結局は上杉さんのをふにゃふにゃなまましごき続け、射精させて終わった。イくとスッキリしたのか、いくらか元気になる。
「まだ時間あるけど、もう戻っていいよ。いろいろすまなかったね。また東京来るときはお願いしてもいいかな?」
こんなプレイでも、また指名しようと考えてくれるとは本当にありがたい。
ビジネスホテルを後にして事務所に電話をする。終電が近いから、事務所には寄らなくていいとのことだった。ここら辺はアバウトというか、厳しくなくて助かる。
たくさんのサラリーマンと一緒に電車に乗り、俺は帰宅した。
最初のプレイは満足いくものではなかったが、上杉さんは俺を気に入ってくれたらしく、一番長いリピーターとなった。
もしこれからの未来を知っていたら、どこかで縁を切っていたかもしれない。自分の選択がどこまで正しかったのかはわからない。
しかし永い縁となり、上杉さんとは深くかかわっていくことになったのだった。