一度だけ、芸能人のお客様が来たことがある。
といっても、その時は気付かず、後日ネットでたまたま画像を見つけて芸能人ということを知った。
確かに、偽名で店に連絡もできるし、実際に会うのはボーイだけだ。芸能人がこっそり利用して広まることもそんなにないだろう。その時使っていた「高橋」というのはもちろん偽名だった。
その日の俺は、この人カッコいいなあ。相手に困らないような人がどうしてウリセンを利用するんだろう? と、相手が芸能人だとは微塵とも思っていなかった。
23時~7時のショートロングコース。年齢は28歳でウケ希望。店からのメールには、「言葉でいやらしく攻めてほしい」とのことだった。
「高橋さんは、よくお店は利用するんですか?」
「ううん。実は数年ぶりで。今日はどうしても寂しくて来ちゃった」
イケてても、芸能人でも、そういう時があるのだろう。
俺は「カッコいいですね」と何度も言いかけたが、悔しくて言えない。この仕事をしている時は優位に立ちたかった。認めてしまったら、自分の方が価値がないことを実感してしまう。
目も鼻も口も大きくて、でも顔は小さい。自分が整形したばかりだったため、この人もそうなのかと疑ってしまう。
しばらく会話をしてからシャワーを浴びて、ベッドへ向かう。最初から俺が上になりリードしていく。ゆっくりと愛撫していくが、「早く入れてほしい」とせがまれる。
コンドームとローションを付けて、正常位で挿入する。痛がる気配もない。
自分で言うのも変な話だが、俺は体が痩せているのにぶっといから、入れると痛がられることがよくある。入れる前から、見ただけで太すぎるから無理と断られることもあるほどだ。それでも痛くないということは、相当なモロ感だ。
「ほらっ! 気持ちいいのかよ! もっと腰振れ!」
リクエスト通りに言葉攻めをしてみるものの……似合わなさすぎて笑いそうになる。
「はぁっ、気持ちいいっ! いっぱい突かれると凄くいい……っ!」
そんな俺とは裏腹に、高橋さんは心から気持ちよさそうに叫んでいる。普段は爽やかそうにしてるであろうイケメンも、こういう表情するんだな。ここだけ別世界みたいだ。それが何となく不思議で、いまいち現実感がない。
いろいろ体位を変えながら突きまくっていると、少しずつ疲れてくる。しかしそれを悟られるわけにはいかない。俺は一度抜いて、別の攻め方をすることにした。