俺は正常位に寝そべり、コンドームを外す。
「しゃぶれ」
俺がそう言うと、素直にフェラを始めてくる。しばらくラクできそうだ……と俺はホッとする。
しかも、うまい。ただがむしゃらにしゃぶるのではなく、激しく舐めるのと優しく舐めるのを交互に続けてくる。快楽に波ができて、そんなに気持ちよくないな……と思ったら徐々に気持ちよくなってくる、というのが続くからずっとお願いしたくなる。
(イケメンのくせにフェラも上手いとは……何か認めるのは悔しいな……)
「さっきからおいしそうにしゃぶってんじゃん。そんなにおいしいの?」
「んっ、すっごくおいしい……!」
「何がおいしいのか言ってみな。ちゃんと俺の目を見て」
悔しさが俺を攻めさせていく。
「アツヤくんのおちんちん、すっごいおいしい……っ」
その顔でそんなことを言われてしまうと、仕事を忘れて興奮してしまう。
「だったら……もっとしゃぶれ!」
後頭部をぐぐっと押し付け、強制フェラをさせる。
「んぐっ、んぐぅ……っ!」
苦しいけど喜んでいるんだろうなと思うと、俺の嗜虐性に火がついてくる。
ベッドから降りて床に立ち、高橋さんをひざまずかせて再度フェラをさせる。
「ほら、ちゃんとこっち見てフェラしろよ。舐めてるとこ見せて」
そう言って俺はぺちぺちとマラビンタをする。
ここまで来ると、自分らしくないと思っていたプレイも楽しくなってくる。例えベタでもやったことがないことをするのは純粋に面白い。
普段なら「演じている自分」が恥ずかしくてできないことや言えないことも、仕事なら平気になってくる。そもそも、ここでは演じるほうが正しいのだ。
「あぁ~、イきそっ! 口に出すからな? 全部飲み干せよ?」
口だけではイけないので、先端だけ口へ入れて自分でしごく。
「あー、イくっ、イくっ、イ……っ!」
口の中で大量に精液を放出する。その時点で冷静になり、口に出しちゃってよかったかな……? と不安にもなる。
しかし高橋さんはしっかり飲み込み、しかも俺がイくタイミングに合わせて自分もしごき、いつの間にかイっていたのだった。
その後は2人でベッドに入って、他愛もない会話を続ける。執拗に甘えてくるので、恋人気分を味わいたいのだなと思う。
(あ~、眠くなってきた……イっちゃったし、深夜だし。寝かせてくれるとありがたいんだけどなー……)
裏腹に、俺の意識は朦朧としてきて、睡魔との戦いだった。
どう見てもお前眠いだろう、とバレバレながらも、高橋さんは話しかけ続けてそのまま朝になった。ようやくだ、と思って帰り支度を促すと、
「あーあ、帰りたくないな」
とつぶやかれる。仕事が嫌なのか、俺といたいのかはわからないが、一瞬ドキっとする。
玄関を出て、エレベーターまでお見送りをするとき、よかったらまた来てね、と伝える。
「お金がもっとあればなー。その時はよろしくね」
そう言ってくれたものの、高橋さんはリピーターにならず、一回限りの客となった。
俺はほとんどテレビを見ないからテレビで高橋さんを見たことはない。ネットで検索すればいろいろ出てくるのだろうが、それも野暮な気がして、しない。
もし最初から芸能人って気付いていたら、どういう反応になっていただろうか。もう会えないだけに、ちょっともったいない気もするのだった。