「それじゃ次アツヤくんね」
マネージャーに呼ばれ、カメラマンの前に立つ。最初はそのまま写真を撮られ、ある程度撮ったらパンツ一枚まで脱いでいく。たくさん人がいる中で恥ずかしい……と思いつつも、俺のことをちゃんと見ている人など誰もいない。
マネージャーがカメラのモニターに映る撮った写真を覗きこみ、いぶかしげな顔をする。
「うーん、アツヤくんどういう路線で売りたいの?」
「え、ええっ!?」
そんなこと考えたこともなかった。突然のことに俺は何も答えられない。
「かわいい系とかさ、かっこいい系とかさ、自分的にはどっちなの?」
マネージャーが詰問してくる。そう言われても、それって他人が決めることじゃないんだろうか。
「え、あの……どっちもです」
答えにならない答えを俺が言うと、マネージャーは不満気になる。
「あと体もさ、もっと、こう……」
そう言ってマネージャーはポーズを取って俺に見せてくるが、カメラマンがそれを遮る。
「まあまあ、モデルやってるわけじゃないんだしさ。ひとまずこれでいいよ」
しかしマネージャーは納得いかないようだった。
「ちょっとこの写真だと……また今度撮り直ししよう」
ここまで写真にこだわるとは。それとも、俺が基準点に達してないだけなのだろうか。何にせよ、認めてもらえないのが辛い。
「アツヤくんごめんねーいろいろ言っちゃって。一回りも年離れているのにさー」
追い打ちを掛けるようにマネージャーが言う。確かに、マネージャーと言えども俺よりずっと年下なのだ。そんな立場でダメ出ししまくってくれるのは、むしろありがたいのだが、感謝したところで俺は何も変わることができない。
俺は撮影だけでぐったりと疲れ果て、帰宅した。
結局、この日撮った写真は使われることはなく、面接の時に軽く撮った写真がサイトに載り続けることとなった。よっぽど自分がイケてないと言われているようで、サイトにアクセスするたびに気が重くなるのだった。