この前の休日。
早起きしたので、カフェで朝ごはんを食べようと思い、外にでました。
休みなのに早起きなんて珍しいからちょっと浮かれていました。
カフェで優雅にモーニングして、戻ったら録画してるドラマみて、午後からは買い物に行くか、誰かとエッチなことしたいな、と思っていました。
平日だったので、多くの人が仕事いく中で、自分だけが休みなのもいい気分でした。
家をでてすぐ、カッコいい男の人が前から歩いてきました。
(あ、いつもの人だ。)
汚れた白いニッカズボン、無地の黄ばんだ白いTシャツを着て、重たそうな大きなリュックを肩にかけていました。
リュックには白い作業用ヘルメットがぶら下がっていました。
近所に事務所か現場があるのだと思いますが、こういう格好をした作業員を毎朝よく見かけます。
いつもカッコいいなと思って見ています。
その中でも彼はよく見かけるイケメンでした。
髪は長めでパーマ、無精ひげを生やした20代半ばくらいの男性でした。
Tシャツからでた逞しい腕が黒く日焼けしていて、とてもセクシーでした。
(こんな人に抱かれたいなぁ)
と思ってみていたら、向こうも僕をみてきました。
見るというより、睨まれているみたいでした。
僕はその目に吸い込まれるように釘付けになりました。
(あまり見ちゃいけない)
とわかっていましたが、その鋭い目付きにドキドキして目を逸らせませんでした。
近くまでくると、プーンとアルコールの匂いが漂ってきました。
(朝からすごい匂い…)
二日酔いなのかな、これから仕事なのに辛いだろうなと思いました。
でも、そのアルコールの甘ったるい匂いにドキドキしました。
家に帰ってないのだろうか。
お風呂にもはいってなさそう。
うちで寝かせてあげたいな、と思いました。
そんな事を考えてたら、突然、
「なんだよ」
と言われました。
(!ヤバイ…)
僕は慌ててうつむきました。
聞こえてないフリをして横を通り過ぎようとしました。
すると、
「おい」
といって、肩をぶつけてきました。
彼の顔をみると、ものすごい怖い目つきで睨んでいました。
「なんでもないです」
小声で言って、また通り過ぎようとすると、
「まてよ」
と腕をつかまれました。
僕は腕をグッとひいて彼の手を振り払おうとしました。
「やんのかこら」
彼は、僕の頭を手のひらで押すようにはたいてきました。
僕はよろけました。
怖かったけど、腹がたったので、睨み返しました。
「なんだよおまえ」
彼は思っきり顔を近づけて睨みつけてきました。
アルコール混じりの体臭がきつくなりました。
近くにいるだけで僕まで酔いそうでした。
僕は怯えて、ただ彼の顔を見返していました。
彼は眉間に皺をよせて、片目を細め、片目をぐっと開いて睨んでいました。
口が半開きで、アルコールを含んだ甘い吐息が顔にかかりました。
(すごい近い。このままキスしたい…)
こんなときにどうしてそんなこと考えるのかわかりませんが、怖さで、現実逃避していたのだと思います。
「おいコラ」
また頭を押さえつけるように、はたかれました。
痛くはありませんが強い力で、僕はよろけてうずくまりした。
「すみません」
僕はうずくまったまま謝っていました。
「なにメンチきってんだよ」
「みてただけです」
「なんでみてんだよ」
「…」
目の前にある、彼の脚をみて、
(ニッカポッカの膝下の膨らみがすごいな…)
とどうでもいい事を思いました。
「おい」
彼は蹴ってきました。
「すみません!」
「だからなんでみてんだつってんだよ」
「…」
「おい」
また蹴られました。
「カッコいいから」
僕はとっさに、正直に答えました。
「はあ?喧嘩売ってんのか?」
「違います、ほんとにカッコいいからみてただけです」
また蹴られたりしたら嫌なので、僕はすかさず
「ゲイだから…すみません」
と全部うちあけました。
予想しない返事で戸惑ったのか、彼は黙りました。
そして、
「キモいんだよ 。みてんじゃねえよ」
捨て台詞をはいて、いってしまいました。
僕はしばらく呆然としていました。
そのあと、カフェにいきましたが、腹立たしさと悔しさと恥ずかしさがこみ上げてきました。
胸はかき乱され、優雅なモーニングどころではありませんでした。
せっかく気持ちのいい朝だったのに。
帰ってふて寝しました。
ベッドにうつぶせになっていたら、ちょっと涙がでてきました。
とても怖かったです。
でも、彼の目つきやアルコールまじりの体臭を思い出すと、なぜか胸が熱くなってドキドキしました。
胸がざわついて、眠れませでした。
また会ったらどうしよう。