僕の初体験はとてもつまらないものでした。
中学1年生のとき、僕はゲイ雑誌を初めて買いました。
自分がホモだということは自覚していましたが、こんな世界があるんだと知ってショックをうけました。
そして自分も男の人とエッチがしたいと強く思いました。
いまもあるのか知りませんが、当時ゲイ雑誌に文通掲示板のようなコーナーがありました。
僕はその中から何人か選んで手紙を書きました。
そして返事をくれた一人と何通か手紙を交わしたあと、会うことになったのでした。
夏休みが始まる少し前の休日、雨が降りだしそうな蒸し暑い夕方でした。
僕はその人の家まで会いにいきました。
家を出る前にシャワーを浴びて、一人前に髪型をセットして、兄の香水を勝手に借りてつけました。
彼には学生服を着てきてほしいと言われていました。
休日だったので、制服をリュックに詰めて家をでました。
そして、地元の駅のトイレで制服に着替え、電車に乗り込みました。
彼の家は少し離れていましたが、苦ではありませんでした。
電車の窓から見える見知らぬ街並みが、未知の世界への期待を膨らませました。
彼のアパートの前につくと、僕はドキドキしてきました。
5分くらいアパートのまわりでうろうろしていました。
意を決して彼のドアのチャイムを鳴らすまで、僕の心臓は何度もはじけそうになりました。
でも、その胸の高鳴りは一瞬にして収束してしまいました。
ドアをあけて姿を見せた彼は、僕のイメージしてた人とは全く違う人でした。
もう顔は思い出せませんが、かなり太っていて、20代の男性だと聞いてたのに、どうみても30を大きく超えているようでした。
当時の僕は理想が高かったのだと思います。
現実に男性とつきあったことがないから、理想しかなかったのです。
ゲイ雑誌に載ってるようなかっこいい男性しか思い描けませんでした。
いま会えばどうかわかりませんが、中学生当時の僕からみたら、30はあまりにも年上過ぎましたし、太ってても気にしない許容力はありませんでした。
わかっていたら、会いにいくことはなかったです。
がっかりを通り越して呆然としましたが、逃げて帰る勇気もありませんでした。
部屋の中は薄暗くて、冷房もなくじめじめしていました。
部屋の隅っこに座ってじっとしてると、彼は麦茶を出してくれました。
僕は黙って麦茶を飲みました。
「緊張してる?」
ときかれました。
緊張もしてるけど、帰りたいと思っていました。
「制服かわいいね」
彼はいろいろ話しかけてきましたが、僕は失礼にならない程度の返事だけをしていました。
「じゃあしようか」
といわれ、僕は頷きました。
「布団敷く?このままでいい?」
僕はこのままでいいといいました。
さっさと済ませて帰りたかったのです。
そして僕はその人と初体験をしました。
初めてのキスはコーヒーとタバコが混じったような嫌な匂いと味がしました。
抱きしめられ、服を脱がされ、体中を舐められ、フェラをされ、僕もフェラをしました。
湿った体、汗の匂い、チンポの味、すべてが不快でした。
彼は僕のチンコをしごいて、いかせてくれました。
その後彼は僕の体に覆いかぶさって、キスをしながらチンコを擦り付けて射精しました。
彼はそのまま僕の横に寝て、腕枕をしてきました。
「もう少しこのままでいさせて」
と言われました。
彼の精子がおなかやチンコについて気持ち悪くて早く拭き取りたくなりました。
密着した体、汗をかいて畳にへばりついた背中、蛍光灯の白々しい灯り、降り出した雨の音・・・五感で感じるすべてがつまらないものに思えていました。
自分はなんでこんなことしてるのだろうと虚しくなりました。
「一緒にご飯食べにいこうか」
といわれましたが、遅くなると怒られるから、と言って断りました。
帰り道はとても憂鬱でした。
期待していた初体験とは大きくかけ離れた結果でした。
汚れた体のまま家に帰るのが嫌で、銭湯にいきました。
その銭湯は、ゲイ雑誌でハッテン場と紹介されていた銭湯でした。
誰か素敵な人が現れて抱きしめてくれないだろうかと、少し期待していました。
でもそんな夢みたいな期待は叶うはずもありませんでした。
その後彼から何度か手紙がきました。
僕は彼の電話番号を聞いていましたが、僕は彼に自宅の番号を教えてなかったので、彼からは手紙でしか連絡がとれなかったからです。
でももう返事は書きませんでした。