その日、ふたり目のお客様は、50歳くらいの完全なオジサンだった。髪の毛は薄く、シワも深く、やや太り気味。個室に入った途端、こんなオヤジだけど今日はよろしくねっ! とあいさつをしてくる元気で気さくな方だ。
「さっそくだけど、何か食べにいこうか。お酒飲めるよね?」
「あ、はい。少しくらいなら」
個室の鍵を閉めて、二丁目近くにあるチェーン店の居酒屋へ入る。そうか、食事することもあるのだなあ。デートというか、一瞬の擬似恋愛的な楽しみ方もしたいのだろうか。
安酒を飲みながら、お客様、林さんは自分のことを語りだす。
既婚者で3児の父親であること。奈良から出張で来たこと。ガンだったけど治ったこと。男にだまされて100万渡したこと。
まったく自分と違う人の人生を知ることで、男を金で買う理由が少しわかった気になる。ノンケとしての生活基盤があると、こういう方法でゲイとの接点が持つのが最良なのかもしれない。
2時間くらいで個室に戻り、当然のようにセックスをする。
林さんは脱ぐと腹に手術の後が大きくあって、その生々しさに驚く。
「アツヤくん、入れてもいい? お願いがあるんだけど」
「お願い?」
この大きさなら痛くなさそうだ、と思いながら俺は尋ねる。
「ナマでヤらせてほしいんだけどな~」
「えぇっ!? リスクもあるし、汚いし、ゴムつけたほうがいいですよ?」
嫌に決まっている、というのを悟られないように、やんわりと答える。子供を3人も作っていると、ナマが当たり前なのだろうか……と、どうてもいいことを考える。もちろん、コンドームを使わない挿入は禁止されている。
「そうか……じゃあいいや」
林さんは簡単に諦めると、今度は執拗にフェラをしてくる。
「口にいっぱい出しちゃって」
しばらく舐められしごかれ続けると、俺は林さんの口の中でイってしまう。
林さんは、嬉しそうにそれを飲み込む。何だか、処女の生き血を飲んで力にするドラキュラのようだ……と思ったが、言えない。
俺も飲まなきゃいけないのかと思いきや、手コキでイったら満足してくれた。
「じゃあ目覚まし7時にセットしたから、もう寝るね。アツヤくんもゆっくり休んでね。朝になったらまたよろしく」
そう言って林さんは眠り始める。
俺も、眠る時間があるとラクでいいなあ、と思いながら、眠った。