その日のお客様は、30代前半くらいに見えた。しかし、年齢を尋ねると24歳とのことだった。
「えっ、かなり若いね! 僕、年上だけど大丈夫ですか?」
「大丈夫です。年上も好きなんで」
嬉しそうに言ってくれたお客様、荒井さん。どうしてこんな若くからウリセンを利用しているのだろう。
「こういったところは良く利用なさるんですか?」
「そうだね。もう1年くらいになるかな。ここのお店は初めてだけど、以前の店の子はずっとリピートしててね。でもみんな、辞めちゃったりするから、なかなかね」
結構なヘビーユーザーだ。決して言葉には出せないが、若いうちからウリセンで遊ぶことを覚えないほうがいいのでは? と心配にもなる。ただ、やっぱり他の客同様に、コンプレックスがあったりモテなかったりするのだろう。
シャワーを浴びるために全裸になると、荒井さんの体は太っているため、たるんで見えるし、若いのに湿疹などで肌が荒れている。
「アツヤさんはきれいな体ですね。余計な肉がなくていいなー」
「そ、そうかな。痩せていて恥ずかしいんだけどね。ありがとう」
確かに、鏡に写った2人の全裸を見ると、どう見ても俺のほうが若く見える。
すると、俺の悪しき感情が沸きあがってくる。
(こんな若い子に金を払わせるほどに俺は価値があるんだ。お金を使わなくちゃ男とヤれないなんて、かわいそう。本当にかわいそう。でもしょうがないよね。大丈夫、金で買ってくれたこの時間はちゃんと楽しませるから)
ゾクゾクっとした。普通の男に付加価値が生まれて、普通でなくなるこの瞬間。俺はやっぱりこの仕事が好きだ。見下せる相手を見つけて自分の価値を見出すというのは、結局俺が最低の人間であることの証明でもある。そもそも、ウリセンを見下している人間もいっぱいいるし、どっちが上でどっちが下ということではない。
ただ、確かめたいのだ。見た目や恋愛は、確実な答えのないあまりにも不条理なものだから。自分はまだ通用するのか? と自分の価値を確かめたくてしょうがない。それがウリセンという方法だっただけだ。
みんな確かめている。それが合コンだったり、ナンパだったり、ハッテン場だったり。受け入れてほしいのだ。いつも。
孤独なのだろうか。それよりも前にも書いた、哀れという表現が一番しっくりくる。哀れんでいるつもりが、俺は誰よりも哀れだ。