初めてのリピーターは、24歳で年下のお客様、荒井さんだった。
指名のメールが入ったとき、見覚えのある名前で、しかもリピーターと記してあってとても嬉しかった。
お金を出して、俺にまた会ってくれる人がいるなんて。
売れないウリセンは、小さなことで喜びがデカいのだった。
個室で待機して、インターホンが鳴ってドアを開けると、当然のごとく荒井さんがいた。
「本当に来てくれたんだ。ありがとう! リピーターって初めてだから嬉しいよ」
そう言って俺は、靴を脱ぐ前に荒井さんを抱きしめる。
「次は泊まりもOKって言われたから、今日は泊まりにしたよ」
24歳の子が、一ヶ月後に会いにくるというのは申し訳なさもある。そのぶん頑張らなくてはいけない。
しかし、二度目ともなると話すことも減ってしまう。しかも話し好きなだけになかなかセックスへと至らない。食事に誘っても断られてしまうし、自分の会話の引き出しを試されているようで気が抜けない。
ようやくセックスになると、今回は俺にタチをやってほしいとせがまれる。
荒井さんは太っているので、入れようとする時に肉をかき分けないといけない。私生活で太った人とヤったことがなかっただけに新鮮味がある。
「んんっ……ちょっと、痛い、かも……」
入れて数分でギブアップされてしまう。やっぱりそうか。太くてごめんね、と一応謝る。それならばと、今度は荒井さんがタチをやることになった。
コンドームをつけて、ローションを塗っていざ入れるぞ、となると緊張のせいか萎えている。
結局、タチもウケも成功せず、手コキをして、最後はやってみたかったという顔射をして終わった。
その後も話を続けていると、ひとつお願いをされた。
「僕のほうが年下だし、苗字じゃなくて名前で呼んでほしいな」
「下の名前は何て言うの? 何て呼べばいいかな」
荒井さんは少しだけ悩んで、答える。
「じゃあ、ヒデで。ヒデでお願いします」
「わかった。これからはヒデくんって呼ぶね」
ヒデくんは、帰り際に、
「また来る……かも」
と言って帰っていった。「かも」には満足できなかった部分もあるということだろう。
ちなみに、リピーターの場合はボーイの取り分が1000円増える。交通費程度にしかならないものの、申告するときは少し誇らしかった。