そういえば荒井さんは話し好きで、シャワーを浴びようと持ちかけても
「もうちょっと後で」
と何回も言われ、プレイの前にもっと話をしたがった。
この日は19時~23時の4時間コースで、滅多にないコースだった。何故かというと、理由こそ不明だが、4時間コースより泊まりのショートロングコースの方が少し料金が安い。だからほとんどの人は泊まりを選ぶ。そこら辺を尋ねると、
「いやー、最初だから泊まりは拘束時間長くて悪いかな、と思って。次回からはいいですか?」
と、律儀な一面もあった。
しかし話し続けるというのは意外に難しく、セックスのほうが楽かもしれない。
埼玉に住んでいて介護の仕事をしていて、好きな歌手は聖子とユーミン。若くても立派なゲイの濃い血が流れている。アニメやゲームも好きだという。しかしゲイバーやハッテン場はいったことがなく、二丁目もウリセンとゲイショップのみ利用しているとのことだった。
喉がカラカラになるほどしゃべり続け、シャワーを浴びてようやくプレイになる。
リバなのでどっちもやってみたいが、今日はタチをやりたいと言われる。まずは抱き合って、向こうが上になって俺の体を弄ぶ。その後でしごきあいをすると、荒井さんはいとも簡単にイってしまった。
「あっ、ゴメン……」
謝ってくるが、俺としてはありがたい。
「じゃあ、次回はちゃんと入れますね。また指名するんで」
「うん。楽しみにしてる」
シャワーの後は服を着て、またソファで話をすることになった。普通のお客様は大体5~10分前には帰り支度をするものだが、荒井さんは1分前になっても変わらず話を続けようとする。俺のほうから「そろそろ……」と言うと、しぶしぶ立ち上がった。
ドアの前に立ち、ドアを開ける前に俺は荒井さんを抱きしめてキスをする。
「また来てね」
「わぁ~、嬉しいなあ。こんなことされたの初めて」
喜んでくれたなら俺としても幸いだ。
たくさん話して相手のことを知ると、やっぱり情が湧いてくるものだが、若いうちに友達作ったり恋愛したほうがいいんじゃないのかなーと余計な心配をしてしまうのだった。